ムクノキ Aphananthe aspera (ニレ科 ムクノキ属
 ムクノキは関東地方以西の温暖な地域に生育する落葉高木。南西諸島や台湾、東南アジアにも生育する。和名は良く茂る木の意味「茂くの木」であるという。成長速度は速く、急速に生長する。川沿いの水分状態がよい場所に生育し、巨木に育ったものが天然記念物などに指定されていることもある。しかし、幹の太さから連想されるほどの樹齢がないのではないかと思われる。神社の境内に生育していることも多い。
 葉はケヤキやエノキと似ているが、上部で表面に剛毛があり、さわるとザラザラする。本種の重要な同定ポイントである。このザラザラ感は、単に剛毛があるからではない。トクサなどと同様に、植物の表面がケイ酸質の物質で覆われているからである。ケイ酸は石英やガラスの主成分であるので、例えて言えば、葉の表面はガラスで覆われている状態であることになる。この葉を食べる毛虫は、まさに砂を噛む思いであろう。このようなケイ酸による装甲は、イネ科やカヤツリグサ科植物などで普通に採用されているが、木本植物では珍しい。このような性質を利用して漆器や鼈甲細工、象牙などの表面研磨にも使われてきた。つまり自然が作ったサンドペーパーである。爪を切った先端をなめらかにすることなども簡単であり、試してみると良い。
ムクノキ果実をつけたムクノキ
ムクノキの葉葉表面の拡大(上:表 下:裏)

1.ムクノキ 2.その2


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