ゲンチアナ・デカンベンス Gentiana decumbens (リンドウ科 リンドウ属) |
モンゴルの Hustai National Parkで美しい花を咲かせているリンドウにであった。澄み切った高原に生育するためか、青の色は濃くて美しい。青はモンゴルを象徴する色であり、寺院や峠などでは青の布が翻っている。青色はモンゴル人にとって崇高とか英雄を意味するのだそうだ。現在は中国の自治区となっている内モンゴルの首都はフフホト、青い城という意味だとか。 Hustai National Parkは海抜1300m程度であり、本来は森林が発達する高さである。少ない雨量のもと、放牧によって森林が衰退し、現在のようになったものと思う。このような場所に生育する植物は大型哺乳類による被食にたいして何らかの対策を行っていると考えたい。リンドウやエゾリンドウの根は生薬では竜胆といい、健胃の薬効があるという。つまり、大変苦いわけである。胃薬を大量に食べるわけにはいかないであろう。 G. decumbens はリンドウやエゾリンドウが茎葉を主体としているのに比べ、根生葉が主体である特徴を持っている。リンドウやエゾリンドウが草丈の高い草原での生育に適応しているのに比べ、本種は低い位置に葉を茂らせており、競争相手となる植物に乏しいことを示している。競争相手の少なさは、乾燥でもあろうし、大型哺乳類による被食でもあろう。葉が地面に接して発達していることは被食の可能性を軽減している。G. decumbens はモンゴル、チベット、ロシア、北東ヨーロッパに分布し、海抜1200〜2700mの乾燥した草原に生育する多年草。 |