ヒメタヌキモ Utricularia multispinosa (タヌキモ科 タヌキモ属
 ヒメタヌキモは本州・北海道・千島に分布する多年草。湿原の浅い水溜りなどに生育する。中部以北の湿原には比較的高い頻度で生育しているが、西南日本では稀。鉄分によって赤く染まっているような、緩やかに水が動く場所に生育することが多く、泥炭が発達し、ミズゴケが覆うような場所では生育しないのではないかと思う。
 泥に半ば埋もれた状態で生育することが多く、発見しにくい植物のひとつ。水中葉は長さ8〜13mmで3〜4回分裂し、先端は鋭くとがる。水中葉の所々には緑色の捕虫嚢が付き、泥中の茎にも白色の捕虫嚢が付く。8月から9月にかけ、稀に黄花を咲かせるとのことであるが、いまだ花を見たことがないし、花を見たという人にも出会っていない。花を咲かせることは稀であり、主に茎の先端に形成される越冬芽で生き残っていることになる。岡山県での生育地は、10ヶ所に満たない程度しか知らないが、越冬芽だけで生き続けているのであるとすれば、希少であるのも致し方ないかと思う。
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