チトセカズラ Gardneria multiflora Makino (マチン科 ホウライカズラ属)



 チトセカズラは兵庫県から中国地方に生育する常緑のツル植物。この地方以外では、中国大陸中南部と台湾に分布している。中国地方に分布とはいえ、全域に生育しているわけではなく、岡山県を中心とした地域ではないかと思う。比較的よく発達した森林や、古生層地帯の崖などに生育していることが多い。木本性のツル植物ではあるが、小生は大きく育ったものを見たことがない。
 林内の暗い場所に生育している個体では葉に紋様がはいり、葉の裏面が赤紫色になり、美しい。十分日光に当たるような場所に生育する場合には葉の紋様は無い場合が普通で、裏面の紫色も不明瞭であることが多い。ツルは、あまり絡まず、先端部のみで絡む程度である。
 昔はよく保存された神社林などで時折見られた程度であったと思うが、最近は生育していそうな場所には生育しているようになった印象がある。森林が放置されて発達し、本種のようなゆっくりと生育するツル植物の生育が可能になったのかもしれない。
チトセカズラチトセカズラ
チトセカズラ(裏面)

中尾茂樹氏からのコメント
 チトセカズラは、潜在自然植生がアラカシ林やウラジロガシ林等の比較的急峻で水分条件の良い渓谷沿いを中心に分布するようです.ギャップの出来た場所や林縁部でのびのびと生長し、開花結実します.それまでは、林内でじ〜としています.(長年見てますが、林内のものは、生長しているように思えません)。

1.チトセカズラ 2.開花個体の葉 3.

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