ハマウツボ Orobanche coerulescens (ハマウツボ科 ハマウツボ属) |
ハマウツボは北海道から琉球、中国・朝鮮・ヨーロッパ東部に生育する寄生性の一年草。広域な分布は種子が海流によって運ばれるためであろうか。ハマウツボはヨモギ属、特にカワラヨモギに寄生する。カワラヨモギは砂地の河原や砂丘に生育するので、ハマウツボもそのような分布になる。画像中の白緑色の植物がカワラヨモギである。 ハマウツボは寄生植物であるので葉はない。5月の終わり頃から7月にかけ、高さ20cmほどの太い花茎を出す。花は紫色で美しい。しかし、砂丘の砂の中からニョキ!と出てくる様は寄生植物としての怪奇性を漂わせている。 |
画像は、鳥取県立博物館:清末幸久氏提供 |
2017年の5月、生態学会の地区会が高知大学で開催され、物部川に案内していただいた。ハマウツボが咲いているとの事で見に行きたい! というわけである。生育していた場所は礫間にシルトが充填されている礫原で、鳥取砂丘での生育とは大きく印象が異なっている。
印象が異なる最も大きな点は寄生している植物がオトコヨモギであることであった。オトコヨモギに寄生するものをオカウツボ( forma nipponica )として区別する意見もあるそうだが、ここでは区別しない意見で整理しておくことにする。 オトコヨモギは物部川に多いヨモギで、小生のHPに掲載しているオトコヨモギの画像も11年前の物部川のものである。カワラヨモギが少ないからオトコヨモギに、というわけではなかろうが、礫原に進出した場合には、このような組み合わせになるのかもしれない。 ハマウツボに寄生されると寄主には大変な負担になるに違いない。上の画像の左側は寄生されていないオトコヨモギであり、右側の小さなオトコヨモギは脇にハマウツボの花が咲いており、寄生の被害にあっている。もともと勢力の違いがあったのかもしれないが、葉の色が薄く、寄生の影響であると考えてよかろうと思う。ハマウツボは1年草とのこと。何年も寄生されるとオトコヨモギの勢力は大きくそがれ、生存することが困難になると考えられるが、当地が礫原で他の植物が侵入しにくいことが、オトコヨモギの繁茂を継続させているのであろう。 |