サクラソウ Primula sieboldii E.Moor. (サクラソウ科 サクラソウ属) |
埼玉県荒川の河川敷の田島ヶ原(たじまがはら)は、日本に残された最大級のサクラソウ自生地として有名であり、国の特別天然記念物に指定されている。植生としては、主にヨシが優占し、ツボスミレが生育するような湿った草地である。 ちょうど良い季節に東京へ行く機会があったので、田島ヶ原まで足を伸ばしてみた。サクラソウの花は盛りをやや過ぎた頃であるものの、さながらお花畑のような景観を見ることができた。サクラソウの他にも、ノウルシやチョウジソウなど、なかなか見かけないものも生育しており観察しごたえのある場所だった。 驚いたのは、そろそろ帰ろうかと思い、最後に遠景の写真を撮るため土手に上って振り返った時であった。なんと所々がピンク色に見えるほどサクラソウが咲いていたのである。サクラソウといえば、乱獲にさらされ、ほんの限られた場所に数個体が点々と生育しているイメージが付きまとう。生育立地はどうあれ、田島ヶ原のこの個体群は圧巻であった。それでも今後とも生き長らえていくには、このような個体群がいくつも必要であることは、ほぼ間違いない。 |
文章・画像:太田 謙 |