ハシリドコロ Scopolia japonica Maxim. (ナス科 ハシリドコロ属
 ハシリドコロは本州から九州、朝鮮に分布する多年草。冷温帯から暖温帯上部の落葉広葉樹林下に生育し、谷底の平坦地や斜面下部に生育することが多い。春はやくから芽をだし、新緑の頃には群生して花を咲かせているが、6月終わり頃には地上部はなくなってしまう。地下に太い根茎があり、勢いのある地上茎をだし、高さ50cmほどになる。葉は長さ20cm弱になり、柔らかくて両面無毛。4月から5月にかけ、葉腋に暗紫紅色の花を付ける。
 全草柔らかく、食べられそうな印象があるが有毒植物として有名である。成分はアルカロイドの一種、スコポリンとのこと。チョウセンアサガオと同じ成分であるが、含有成分が多いので中毒になると重症になりやすく、死に至ることもあるらしい。狂乱状態が激しく、走り回るのでハシリドコロの名前が付いているとのことで大変である。薬用としては鎮痙・鎮痛作用があり、ロートエキスとして鎮痛薬や目薬に使用されている。劇薬であり、素人の利用は厳禁である。
 ブナ林の谷を歩いているとハシリドコロの群生地にであうことがある。夏に同じ場所を通るとその痕跡すらない。化学屋さんから夏にハシリドコロの採取を依頼され、自信満々で出かけたものの、ついに根茎を見つけることができなかった経験がある。早春から初夏にかけての短い期間に地上部を出す点ではセツブンソウカタクリなどの春の妖精(早春植物)と同じであるが、一面に広がるハシリドコロは不気味である。緑がない時期に葉を出す為には、毒による防御が有効なのであろう。
ハシリドコロハシリドコロの花
ハシリドコロ谷底の落葉広葉樹林下に一面に広がるハシリドコロ


種名一覧にもどる / 科名一覧にもどる / 雑学目次にもどる / HPにもどる