ハマゴウ Vitex rotundifolia (クマツヅラ科 ハマゴウ属
 ハマゴウは海岸に生育する常緑の低木。本州・四国・九州からアジア東南部から南大西洋、オーストラリアにも分布している。葉の裏面には灰白色の毛が密生しており、白い。夏に美しい唇形の花を咲かせる。花冠は長さ1〜1.5cmで青紫色。おしべは4本。砂質の海岸に生育し、砂質海岸と周辺森林との境界部分に群落を形成していることが多い。地表を這って群落を拡大するが、花を咲かせるときには先端部が立ち上がって、高さ60cmほどになる。
 果皮がコルク質であり、海流に運ばれて分布するので、海によって分布が制約されることがないので、海岸に生育する植物の分布は実に広い。異国で海岸に出るとそれまで日本にはない植物群ばかりを見ていたので、にわかには日本と同一種であることに自信を持てなくなってしまうが、同一種である場合が多い。海には国境がないわけである。
 ハマゴウは、以前は砂浜に普通の植物であり、海水浴の想い出と重なっていたが、最近は次第に少なくなりつつある。特に瀬戸内海地域では護岸の整備と海砂の採取などによる海岸の浸食によって砂浜が狭くなりつつある。このような現状に加え、地球温暖化に伴う海面上昇が加われば、海岸植物(特に砂浜)の生育は危機的状況になると思われる。自然海岸線の保全あるいは、人為的に人工海岸の自然化などによる保全を検討することが必要な時代となった。


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