コウボウムギ Carex kobomugi Ohwi (カヤツリグサ科 スゲ属
 コウボウムギは海浜に生育する多年生の草本。東アジアの海岸に広く分布し、砂丘上にやや疎な群落を作る。葉は厚く、表面は滑らかで縁に細かい鋸歯がある。雌雄異株で地下茎を伸ばし、節から新しい株を出す。古い葉鞘の繊維が地下に残り筆のような形になり、実際に筆として使われたこともあると言われ、別名のフデクサ(筆草)はこれにちなんでいる。これを弘法大師の筆にたとえ、雌小穂と実の形が、ムギに似ているため弘法麦と呼ばれる。
 海岸は海水の飛沫や強い風など、海からの影響を強く受けるため、植物にはきびしい環境となる。海岸はおよそ浜・磯・河口などに分けることができるが、たいていの場合、種類は少ないもののその環境に適応した植物が生育している。砂浜は風による砂の移動が激しいが、砂が安定するにつれて生育する植物は増えてくる。コウボウムギはそうした中でも砂浜の最前列の環境に適応している。
文章・画像:太田 謙
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