水田とイネの連作



 同じ作物を同じ場所で連作すると、多くの場合作物に病気や栄養障害などの障害が発生する。これを「連作障害」という。新たに開墾して作物を作る場合には、その作物に対する病害虫がほとんどいないので、作物はその土地の能力に対応して生長するが、同じ場所で連作を続けると、やがてその作物をターゲットとする病害虫が侵入し、増殖してくる。特定の栄養素を要求する作物であれば、連作によってその栄養素は欠乏するであろうし、不要物質は蓄積することになる。このような連作障害は、人間の側から見れば、困ったことであるが、その作物をターゲットにする生き物の側から見れば、食料が毎年大量に栽培される、またとない立地であるのだから、定着し大量発生するのは当然のことである。

 連作障害は多くの植物で観察される。というより、樹木を含むほとんどの植物が連作を嫌うといって良い。少し具体例を述べてみよう。

 このように見てくると、単一の作物を大量に栽培すると連作障害が発生するのは当たり前であり、樹木ですらタイムスパンは長いものの、同様な障害が発生する。土壌の中では、地上部と同様に植物の根を巡って害虫や菌類、バクテリアなどが生活している状況を実感する。植物は基本的に芽生えると移動できないので、このような土壌の世界における生物的環境は、地上部とともに重大な問題である。
 土壌中に病害虫が増加すると、その場所から逃げる戦略がある。蓄積してきた有用物質を可能な限り種子に詰め込んで、新天地に移動する。このような引っ越しを毎年行う植物は、一年生草本である。病虫害防止のための設備投資にエネルギー投入するよりも、新天地への移動を選択していると言えよう。しかしながら、散布された種子は必ず病原菌の居ない新天地に到達できるとは限らない。
 頻繁に引っ越しする一年生草本と対局にあるのが、極相林構成種であると言えるであろう。同じ場所に長期間生育し、子孫も同じ場所に生育するタイプの樹木は、病害虫に対して強い抵抗性を持っていなくてはならない。特に種子や発芽直後の抵抗力の低い時期における土壌生物の環境は大切である。自然林の場合、土壌中に生物が居ないことはあり得ない。この多様な生物群に対して、強い抵抗力を持っているか、あるいはこれらの生物群がその植物の味方であり、親衛隊としてその植物を守ってくれるような土壌生物環境である必要がある。

どうすれば、連作障害を防げるか?
 スイカやナス、トマトなどは連作障害が出やすい作物である。逆にネギ、タマネギやキク科の作物は連作障害が出にくい。臭い植物が連作障害が出にくいように思える。これらの植物は、自ら病害虫などの忌避物質を生産してばらまいていると解釈してはどうだろうか。
 連作障害の出やすい作物の側に、マリーゴールドやネギを植えておくと連作障害が出にくいという。



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