吟醸酒・大吟醸酒
 日本酒の作り方には幾通りものやり方があるようだが、高級なものに吟醸酒・大吟醸酒がある。吟醸酒を作るためには、粒の大きな酒米を十分に精米したものを原料に醸造する必要がある。米粒の周辺を削り落とし、中心部だけを酒造りに使用するわけである。高級なものでは、元の半分ほどの重量に精白するという。

【なぜ中心部だけを使うのか?】
 米粒の最も周辺には、いわゆる「ぬか」と呼ばれる層があり、これが付いたままの米が玄米である。「ぬか」の部分には油脂やビタミン類もたくさん含まれている。「ぬか」から油脂を抽出したものがライスオイルであり、サラダ油などに利用されている。玄米食が体によいと言われるのも、食物繊維を含んでいることと、栄養分に富んでいるためであろう。発芽して植物体となる「胚芽」の部分はタンパク質などを含んでいる。これらの油脂やタンパク質は発酵させると複雑な味を持った物質に変化し、いわゆる「雑味」となって日本酒の味を複雑なものにし、通常味の質を低下させてしまう。
 これより内側の層もタンパク質を含んでいる。このタンパク質の含有量は外側ほど多い。一年生草本であるイネが種子を作り始めた段階では、葉には酵素としてのタンパク質や細胞を構成する原形質の成分としてのタンパク質が多量に含まれており、活発に光合成を行っている。この時期には、葉で光合成によって合成されたブドウ糖が種子に運ばれ、デンプンとなる。この時期のイネ粒は柔らかく、噛むと甘い。種子が十分熟れる頃になると、葉は黄色くなり、黄金色の稲穂となるが、これは葉に含まれていた葉緑素が分解されたためである。葉に含まれていたタンパク質の多くは、種子へと移動し、最後の仕上げとなるわけであるが、この時点で種子に運搬されたタンパク質は米粒の最も外側の部分を構成することになる。この過程で種子の表面にはタンパク質を多く含む層(糊粉層)が形成され、中心部はデンプンのみからなる部位になるわけである。精白すればするほどデンプンの純度はあがり、タンパク質の含有量は低下する。吟醸酒の醸造は、このデンプンのみからなる部分を使用し、大吟醸では65%も磨く(削り取る)事もある。中心部のタンパク質をあまり含まない部分が大きい雄町米のような大粒種が酒米に向いていることになる。

【吟醸酒はなぜフルーティ?】
 発酵は生き物である酵母が行うわけであるが、酵母が成長し、生きていくためにはデンプンからできたブドウ糖以外にも様々な栄養分が必要である。このような栄養分は米と水から供給されることになる。水質によって酵母の活性が異なり、カリウムなどの無機栄養分がたくさん含まれている水では酵母が元気がよく、発酵が速く進んで辛口のお酒ができやすい。窒素やリンなども必要であり、これらは水とともにお米に含まれているはずであるが、純粋なデンプンに近い強度の精白を行った米ではこの栄養素が大変少ないことになる。このような、ある意味では栄養不足の状態で発酵を進めると酵母が苦労し、芳香成分であるエステルが形成されるらしい。
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