イワショウブ Tofieldia japonica (ユリ科 チシマゼキショウ属)
 イワショウブは亜高山帯の湿原に生育する日本特産の植物である。葉はショウブのように表面を内側に折り畳んだ形になって剣状である。草丈は20〜30cm程度。花は8月から9月に咲き、花茎に小さな白い花が多数咲く。花茎には腺毛が多数あって粘る。
 この植物に最初に出会ったのは霧ヶ峰の八島ヶ原湿原であった。湿原の中で楚々と咲く白い花は印象的であった。次に出会ったのは、岡山県の蒜山地方、海抜680mほどの蛇ヶ乢(オロガタワ)湿原であった。よく知っているはずなのに、名前が出てこない。亜高山に生育する植物が、まさかお膝元の暖温帯の湿原に生育しているとは思いつかなかったからである。ちなみに、この地域はイワショウブの分布西限である。寒冷な氷河期などに分布していた植物がその後の温暖化によっても生き残ったものと思われる。氷河時代の遺存植物であり、盗掘などは慎みたい。
イワショウブイワショウブの花:花茎に腺毛
イワショウブの群落イワショウブの葉
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