ツルボ Scolla scilloides (ユリ科 ツルボ属)
 ツルボは海岸の崖地に生育するほか、土手や田の畦などに生育する。海岸の崖地は人手の加わらない自然性の高い立地であるが、溜池の堤防などは、定期的な刈り取りが行われる典型的な里地の草原である。どこに共通性があるのであろうか?
 ツルボは春と夏、2回葉を展開させる。刈り取り草地に生育するツルボは、春の田植え前の草刈後に葉を展開させ、夏草が茂るに伴って一度休眠し、その後お盆頃の草刈後に花茎を伸ばすと同時に再び葉を展開させる。まるで農業暦を知っているかのような、葉の展開である。ちゃんと草刈をやっていないため池の堤防には生育できないことになる。さて、海岸の崖地ではどうであろうか。真夏の海岸の崖地は高温になり、生育は大変であろう。真夏の強烈な暑さの時期には休眠し、春の温暖な季節と秋風が吹き始めたお盆過ぎから葉を展開させる戦略であり、これも日本の四季に見事に適応した葉の展開戦略である。
 このように考えてみると、本来は海岸の植物であり、そのライフサイクルが日本の農業暦とも一致し、溜池の堤防にも進出が可能であったものと考えることができる。


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