ホロムイソウ  Scheuchzeria palustris L.    (ホロムイソウ科 ホロムイソウ属)
 下の写真は生育地の様子である。ホロムイソウは植物の密度が低く、植生高の低い場所に点々と生える。地下水位が高く、降雨の際には表水が現れるような立地に生えることを得意としているようだ。一緒に生えているのは主にミカヅキグサ、ワタスゲ。中央のミズゴケのブルト(微凸地)は主にムラサキミズゴケと思われる。

 ホロムイソウという名をはじめて聞いたときは、名前の意味がまったくわからなかった。北海道の湿原を調査していると、ホロムイイチゴ、ホロムイスゲなど、「ホロムイ」という言葉のつく湿原生の植物によく出会う。「ホロムイ」とは聞きなれない言葉であり、その意味を調べてみると地名であった。北海道石狩平野の岩見沢市に「幌向」という場所がある。
 幌向のあたりは現在、田畑が広がり、農作物の産地である。高速道路を使えば、札幌もほど近い。しかし、この周辺は開拓前には石狩川が蛇行する原野で、湿地が広がっていたという。その中でも特に良好な湿原が幌向という所にあり、ここで初めて採取されたため、その名をとって幌向草と名づけられたとのこと。
 石狩平野は北海道最大の泥炭地でもある。あえて類例を出すなら、今でもそれなりに形を残す釧路湿原か、それともサロベツ原野のイメージだろうか。現在の石狩平野を車で横切っても、石狩原野の風景はもう残っていない。
文章・画像:太田 謙
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