カラマツ Larix kaempferi (マツ科 カラマツ属
 カラマツはマツ科の中では珍しい、落葉性の高木。本州の宮城・新潟県以南から中部山岳地帯に自然分布する。火山地帯に生育することが多く、荒れ地・痩せ地・湿地に生育し、パイオニア的性格を持つ。本来の生育地は亜高山帯からブナ帯上部であると考えられる。

 各地の高海抜地域にに広く植林されている。樹高は30m近くになり、直径も1mを越えるものがある。葉は線形で長さ2〜3cm。短枝では葉は円形に配列され、枝先などの長枝では螺旋状に配列される。花は5月頃に咲く。和名は葉の付いた様子が唐文様に似ているとの意味であり、落葉するので落葉松、富士山に生育するのでフジマツの別名もある。秋には黄葉し、春は新緑が美しい。

カラマツの新緑
冬のカラマツ林新緑のカラマツ林
カラマツの長枝カラマツの短枝
カラマツの短枝カラマツの樹皮
 戦後始まった拡大造林の時代、海抜が高い地域や痩せ地では植林に適した樹種が見あたらなかった。その中で取り上げられたのがカラマツである。ブナ帯ではスギの植林は成功しにくく、美林には仕立てにくい。湿原の周辺や、火山灰の痩せ地なども同様である。このような立地でも生育が比較的良好なカラマツが注目されたわけであるが、植栽した時点で、十分な用材利用の見通しがあったわけではない。
 カラマツの材は建築用材や土木資材として良材であるが、若い材にはねじれがあり、板材として使いにくい点、ヤニをたくさん含んでおり、パルプ用材としては使いにくいなどの欠点があった。大規模な造林が始まった時点においては、これらを解決する手段は開発されていなかったようで、大きく生長して伐採時期になる頃には、開発されているであろうとの見込み発車であったという。
 その後、国産材の需要はやすい外材によって冷え込むことになってしまい、放置されている場所がほとんどである。とはいっても、大きく育った天然のカラマツは良材であり、銘木として珍重されている。植林されたものでも、あと百年もたてば、良材になるのかもしれない。ねじれの少ない品種も開発されているとの事。

 カラマツは落葉であるので、葉の量はスギやヒノキに比べて少なく、林内は明るい。しかし、林床にはあまり植物が生育していなことが多い。カラマツの落葉が厚く堆積して菌糸層が発達するので、林床にほとんど植物が生育しない森林になってしまうのである。

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