コウヤコケシノブ Hymenophyllum barbatum (コケシノブ科 コケシノブ属) |
コウヤコケシノブはコケのサイズのシノブであるとの名前を持つ。「コケ」の性質に注目すると、乾燥すると葉を折りたたんでしまい、乾燥耐久姿勢をとる。コケでは、乾燥すると葉を巻いて白っぽく見えることが多いが、コケシノブの仲間は黒くなって葉を巻いていく。色の変化はどのような仕組みなのか興味深い。乾燥に対応した形態をとることができるということで、乾燥に強いかといえばそうではなく、空中湿度が常に高い場所が生育環境であり、乾燥する岡山県では生育は少ない。 シダ植物としての性質としては、細いけれども地下茎を持っており、無性的に群落を容易に拡大できるという点であろう。コケ植物の多くより大きなサイズ。環境条件が整えば、地下茎で広がり、コケ植物を圧倒する戦略である。 コケシノブの生育する岩場を観察していると、まずコケが生育して土壌が形成されるとコケよりも丈の高いコケシノブが侵入し、場所によってはさらに草丈の高いミツデウラボシなどのシダ植物が侵入することがある、という遷移系列が存在するように思えてくる。コケ群落に新たに侵入することは、多くの植物にとっては困難であり、ごく小さく地下茎を持つコウヤコケシノブならでの侵入に思えてくる。しかし、現実は単純ではなく、コケ群落も剥がれ落ちることがあり、コケシノブの群落もはがれて遷移がリセットされることも結構あって、コケ群落が全てコケシノブの群落に置き換わることは無い。 |