葉にある蜜腺は何の役割? 



 図鑑を見ていると,「葉や葉柄に蜜腺がある」などと記述がある。蜜といえば、花とミツバチの関係を連想してしまい,長らく葉に蜜腺が存在することの意味がわからなかった。実際に葉の蜜腺から蜜が分泌されている様子を観察したこともなかったし,虫が吸蜜している事に気づいたこともなかった。採集する際にはアリの存在はただ単なる邪魔者にしかすぎず,押し葉にした標本をにらんでいては,蜜腺の役割に気づかなかったのも当然であった。
 最初に葉の蜜腺の役割に気づいたのは,アカメガシワの蜜腺にアリがたかって吸蜜しているのを見たときであった。虫除けの粘液かと思えば,本当に図鑑に書いてある通り,蜜腺であった。

アブラギリの蜜腺アカメガシワの蜜腺
サツマイモの蜜腺
ソメイヨシノの蜜腺
パキラの蜜腺
パキラ



 蜜腺の位置と形としては,葉柄と葉の境界付近に2つの蜜腺が付いているものが多い。しかし、観葉植物のパキラでは、葉柄に「蜜線」と呼んでも良いようなライン状の蜜腺があり、垂れて流れるほど,盛んに蜜を分泌する。もっとも、上の写真のように大量の蜜が分泌されているのは室内のアリがいない環境の話であって,自然界ではこれらの分泌された蜜は速やかにアリなどによってなめられてしまい,わずかに湿っている程度にしか認識できないのがふつうである。

 葉に蜜腺が存在することの意味は何であろうか? 主にアリさんにパトロールして欲しいからであると考えられている。アリが葉をパトロールする際には,ついでにガなどの卵や孵化したばかりの毛虫などを餌として持ち帰る。植物はアリを親衛隊として雇っているわけである。
 アリが葉をパトロールしてくれるためには,甘い蜜が魅力的であるが,たくさんの蜜を分泌することは得策ではないかもしれない。アリさんが蜜だけで満足してはガの卵を持って帰ってくれないかもしれないからである。また、ガが産卵のために飛来するのは夜間であり,昼間よりも夜に分泌するほうが,より効率的であるはずである。実際、夜にたくさんのアリが蜜腺を来訪している。葉が成長して十分硬くなると、毛虫などによる食害は少なくなる。したがって,蜜の分泌は新芽を出してから葉が成熟して硬くなる間が主である。



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