天石門別神社(あめのいわとわけ)のモミ2題 その1
 2004年の3月に久しぶりに天石門別神社を訪れてみた。谷底に生育していたモミの大木が、根本近くから折れていた。破断面は新鮮であったので、折れたのは最近らしい。谷底に生育していたので、台風などの風によるものとは考えにくい。おそらく、12月20日の積雪によるものと思う。この日、津山測候所のデータでは、積雪40cmを記録しており、湿った雪が大量に降った。このために各地で巨樹が倒れたり、枝が折れたりしたことが報告されている。
 岡山では、モミは神社の境内や城跡などに生育していることが多い。その理由の1つは、神様が降りてくる時の目印としての宛木(あてぎ)として、広葉樹から抜きんでて先が尖った目立つ樹形である針葉樹が好まれること、スギやヒノキなどの針葉樹は有用材として伐採されることがあるが、モミはあまり役に立たないので残されることなどがあると思われる。天石門別神社のモミもそのような経緯で残された側面があると思われる。
 モミは元来、尾根や斜面上部の急傾斜地に生育することが多い。崖崩れなどの腐植土に覆われていない鉱物質の土壌上でないと芽生えることができないためである。土壌の薄い場所に生育するため、モミの大木は根返りして倒れることが多く、このように腐ってもいないのに根本からボッキリと折れてしまうことは珍しい。谷沿いに生育していたために根は十分に張れたものの、光を求めて元々斜めに幹が伸びており、湿った雪の重さに耐えかねたのであろう。材の強度がそれほどではないことも示している。モミの材は狂いやすく、棺桶ぐらいにしか使えないとも言われる。この折れ方をみると、材としてあまり優良なものではないことは納得できる。

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