ソヨゴ  Ilex pedunculosa Miq.  (モチノキ科 モチノキ属
 ソヨゴは生育地の環境に合わせて多様な生育型を示して面白い。岡山県の沿岸地帯ではアカマツ林の亜高木から高木にまで生長し、マツ枯れ後の森林植生の重要な構成種となっている。鷲羽山などの痩悪林地では、高木にまで生長している個体と同時に、匍匐状態のソヨゴも見られる。
 以前からソヨゴの芽生えを探しているが、なかなかお目にかかれない。非常にポピュラーな樹木でありながら、芽生えが見つからないのである。芽生えだと思って掘ると、匍匐しているだけで、近くの芽生え状のものと繋がっており、所々から発根している。匍匐型のソヨゴは光環境の良好な場所まで移動し、発根して新たな個体として生長するように見えて面白い。ソヨゴは種子発芽にかなりの年月を必要とするらしく、種子を蒔いてもほとんど発芽してこない。このような種子発芽の困難さと匍匐形の存在は、関連しているのであろう。
 茎が匍匐して所々から根を出して高さ1m程になるものをタカネソヨゴとして区別する意見もあるが、積雪地帯だけではなく広く見られる現象なので、特に区別する必要はないと思う。

 ソヨゴは根が浅く、直根を持っていない。昔、クレーンでソヨゴを引き抜いたことがあるが、いとも簡単に抜けてしまった。根は細く、地表面に密に張り巡らされている。乾燥したの痩せ地で雨水や栄養分をいち早く吸収するには適している戦略であると思うが、雨が降らないときにはカラカラに乾いてしまう。乾湿の変動の激しい地表部のみへの根の分布は、丈夫な乾燥に耐える葉の構造と関連している。
 地表面のみに発達した根系のため、ソヨゴは幹を支える力が弱く、大きくなると倒れやすい。ある野鳥観察施設で松枯れの後、ソヨゴを残して他の樹木を伐採したところ、風当たりが強くなったソヨゴは次々と倒れてしまった。マツの下に生育してこそ、ソヨゴは高くなれていたのである。倒れるほどでなくてもソヨゴは傾きやすい。ある程度傾くと根元からたくさんの萌芽が発生し、新たに直立した幹を再生する。倒れやすい点を簡単にやり直して修復するわけである。この強い萌芽再生力が二次林の中での生育を保証している。


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