カクレミノ Dendropanax trifidus (Thun.) Makino  (ウコギ科 カクレミノ属
 カクレミノの葉は変化が大きく、学生を悩ませる植物の一つである。芽生えたばかりの幼苗は切れ込みのない葉であるが、幼木では深く3〜5裂し、5裂したものは葉柄は長さ2〜10cmで、ヤツデと似ている。生長するにつれ、切れ込みは浅くなり、全縁の葉と3裂した葉が混ざるようになる。先端につく葉は葉柄が短く、切れ込みが浅いが、それより下位についている葉の葉柄は長く、上の葉と重ならないようになっている。下の葉ほど切れ込みが深い傾向がある。大きく生長した葉では、質感は同じであるものの、全縁で長楕円形の葉ばかりとなり、とても同じ種であるとは思えない姿に変身する。このような全縁の葉がつく状態にまで生長したものは花を付け、実を結ぶようになる。
 一般に、林床のような暗い場所では下の葉にも光が当たりやすいように切れ込みのある葉を形成した方が有利であり、充分に光が当たる状況になると厚くて面積の狭い葉を付ける事が有利であると言われている。

 高橋(1997)はカクレミノの葉の形態と照度の関係を研究し、広卵形の葉は葉の密度が大きい陽葉であり、相対照度が30%以下になると掌状に分かれた葉が多くなり、掌状の葉は葉の密度が小さく、光補償点の低い陰葉である結果を導き出している。

参考文献:高橋和成(1997) カクレミノの異形葉に見られる環境適応.岡山朝日研究紀要、No.18


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