タラノキ Aralia elata (Miq.) Seemann (ウコギ科 タラノキ属
 タラノキは全身刺で武装している。葉にも鋭いとげがあるが、枝や幹にも刺がある。刺は生長しないので、幹が太くなるにつれて刺の密度は低くなるが、痛いことには変わりない。幹の直径が15cmを越えるほどに生長すると、さすがに刺は表皮と共にはがれて落ちてしまう。これほどの刺を作るためには、かなりの資源を充当しているはずである。大型の草食動物の食害を防止するための戦略であるが、このような重装備にもかかわらず、春の山菜好きはものともせず、新芽を採取して回っている。昆虫に食べられないための独特の味付けが、天ぷらなどの調理法方を習得した人間様には、なんともこたえられない美味となってしまっている。
 
 タラノキは種子で繁殖する他に、根からも新しい個体が再生する。山火事跡地などでタラノキの芽生えがあるな・・・と思って掘ると、土中には太い根があり、これから新しい茎が地上に伸びていることがある。右下の画像は、太いタラノキの周辺に細いタラノキの茎がたくさん発生している状況を撮影したものである。樹齢25年前後と思われるタラノキの樹勢が次第に衰えはじめた。その翌年、周辺から多数の若いタラノキが発生したのである。根元の土を除いてみると、全てが親木の根から出ている。本家が衰退すると、勢力が余り余った根から分家がたくさんできたことになる。このような根からの再生は、根が地表面付近にあって光があたる状況でよくおこり、ササなどに覆われている場所ではおこりにくい。荒地で生育する際の、したたかな戦略である。


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