ハンノキ Alnus japonica (Thunb.) Steud. (カバノキ科 ハンノキ属) |
ハンノキは湿原や沼沢地に生育する高木であり、日本全国・朝鮮・ウスリー・満州に分布している。湿原のような過湿地において森林を形成する数少ない樹木である。樹皮は暗灰褐色で、小さく割れてはがれる。葉は長さ5〜13cmで卵状長楕円形。基部はくさび型で先端も尖る。葉脈の側脈は7〜9対。表面は無毛で鈍い光沢があり、裏面はほとんど無毛で、葉脈の脈腋にわずかに毛がある。花は11月から4月にかけて咲く。 ハンノキからは良質の炭ができるので、炭を生産していた時代には盛んに伐採されたという。近年は沼沢地の開発などにより減少しつつあるが、部分的には山間の水田耕作放棄により新たに発達しつつある所も見られる。発芽・生長には強い日照が必要であり、ハンノキ林やカサスゲなどの植生が発達している場所では新規の定着は困難である。恐らく、ハンノキ林が発達を開始する時点では、土砂の流入などの裸地条件が必要なのであろう。 春の芽だしは比較的遅く、葉量も少なく葉寿命も短いので林内は明るい。このために、林床にはリュウキンカやビッチュウフウロ、コバギボウシなど、様々な植物の生育が見られることもある。林内には網目状の水路が存在することが普通であり、場所によってはミヤコイバラなどの有棘植物が混生することも多い。 根には放線菌が共生しており、根粒を形成している(根粒の画像)。放線菌は空中窒素固定能力があり、湿原のような貧栄養環境においても高木として生長できる。 |