ブ ナ Fagus crenata Blume (ブナ科 ブナ属) |
ブナ林は明るい林である。草本や低木も生育しているが、亜高木層に生育する樹木が少なく、見通しがよい。幹の大きさも大小はあるもののそろっており、整然とした印象もある。ブナ林を構成している個体の樹齢を調べると、大きさに違いがあってもほとんど同齢であるという。何らかのきっかけで、一斉に発芽して成長したと考えなければならない。 このような明るい見通しの良い森林は、視覚で安全を確認する人間にとっては、安心感のある快適な森林である。このような明るい森林は、「昼なお暗き」常緑広葉樹林とは異なり、草本層に多数の植物の存在を許している。豊富な草の存在はシカなどの大型草食獣にとっては大変好ましいに違いない。森林から植物性食材を得ようとするならばシイ林よりもブナ林の方が遙かに豊かに違いない。このような事に着目し、南から伝播した照葉樹林文化に対比し、ブナ帯文化という呼び方がある。採取・狩猟時代は、冬の季節を除けばブナ林の方が生活しやすかったであろう。 |