ブ ナ Fagus crenata Blume (ブナ科 ブナ属
 ブナは北海道の渡島半島黒松内以南(以西)の本州〜九州に分布する落葉高木。ミズナラとともに冷温帯林を代表する樹種である。葉は形が整っており、7〜11対の葉脈が等間隔に並んでいる。よく似た種にイヌブナがあるが、イヌブナはブナよりも葉脈の数が多い(10〜14対)点で区別できる。若葉の両面には長い軟毛があるが、やがて葉脈上を除いて無毛になる。
 材は乾燥によって狂いやすいので使いにくいが、近年は加工技術の改良によって家具などにも利用されている。パルプ原料などに大量に伐採され、現在では残っている地域がごく少なくなってしまった。岡山県では海抜500mを越えるとわずかながら出現するが、群落を形成するのは800m付近よりも高海抜の地域である。
 ブナの種子は小さいが、そのままで食べられる。数年に一度結実し、その間の年はほとんど結実しない。成り年は全国的に同調しており、成る木と成らない木が混在することはない。このような種子形成の波動は、種子を食べるネズミなどの小動物との関係であるという。種子が成らない年が数年続くとネズミは冬季の餌を確保できず、個体数が減少する。ネズミの個体数が減少した時点で、ネズミが食べきれないほどの種子を形成して散布する。このような時期に散布された種子のかなりの部分は食べ残されて発芽することができる。毎年同じ数だけの種子を形成すると、それに見合ったネズミの個体群が存続し、生産された種子のほとんどが餌として食べられてしまうわけである。
 ブナの開花・結実のサイクルは、単純な気候要因ではないようで、興味深い。
ブナ脈上と縁に長軟毛が残る:側脈は7〜11対
若葉では全体に長軟毛があるブナの若い果実

1.ブナ 2. 3.樹皮と根 3.ブナ林

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