ウラジロガシ Quercus salicina (ブナ科 コナラ属 常緑カシ類))
 岡山県苫田郡奥津町小山に「七色カシ」と呼ばれる町指定の天然記念物がある。ウラジロガシの変り種であり、5月の中ごろから6月にかけて、緑色濃くなりつつある山里の中、ひときわ黄金色に目立っている。春の芽だし時期は写真のように黄金色であり、その後ゆっくりと緑色が濃くなり、夏になると普通のウラジロガシと同じような葉の色となって目立たなくなる。葉緑素の形成が通常のウラジロガシより遅く、ゆっくりとしているのであろう。種子は稔るので、周辺には実生もあるが、このような黄金色にはならないそうである。

 昨年の葉は、通常のウラジロガシと同じように緑であるが、新芽の部分は黄金色である(最後の写真)。葉緑素の形成が遅れており、下地のキサントフィール系の色素が表に現れている。新葉が成長する際には、どの植物でも葉緑素の量は最初は少なく、ある程度葉が成熟する段階で、はじめて葉緑素が増加する。光合成の準備ができていないうちに光エネルギーを獲得してしまうと、そのエネルギーの対処に困るからであろう。人間の眼にはよく分からないが、葉緑素計等で計測してみると葉緑素の増加には、ずいぶんと時間がかかっている。特に常緑樹では時間がかかるようである。七色カシは突然変異的なものであろうが、種として葉を完全に構築してからはじめて葉緑素を形成する植物もある。たとえば、カナメモチはその代表であろう。
ひときわ目立つ七色ガシ七色ガシ
七色ガシの展葉期の様子七色ガシの葉

  2017年の秋、近隣を通過したので七色ガシを思い出し、車を止めて撮影した。上の画像をまだ発掘できていないので撮影年代がわからないが、情緒あるわらぶき屋根が残っており、周囲のスギ植林はまだ幼木。今回の風景ではスギは大きく育っており、数十年間の歳月が感じられる。ともあれ、健全に生長している状況であり、まずは一安心。

2017年11月の七色ガシ

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