ヒサカキ  Eurya japonica Thunberg  (ツバキ科 ヒサカキ属
 ヒサカキは雌雄異株である。3月から4月にかけ、目立たない花を咲かせるが、花には独特の香(臭気?)があるので早春の山を歩くと開花がすぐにわかる。春の訪れを感じさせる香りである。日当たりの良い場所に生育するヒサカキの枝にはびっしりと下向きに花が付く。花弁は5枚であり、直径2.5〜5mm程度。淡黄色であり、花弁の先端がわずかに紫色を帯びる。雌花には中心に1つのめしべがあり、先端は3つに別れ、時として退化したおしべがあることもある。下の画像では、めしべの基部から蜜が分泌されているのがわかる。雄花には12〜15のおしべがあり、中心に退化しためしべがある。
 果実は直径4mm程度の球形であり、10月頃には黒く熟すが真冬まで残っていることが多い。多くの果実が秋に稔り、小鳥に食べられるが、ヒサカキの果実はそれらが少なくなった真冬に食べられ、種子が散布されるのだと思う。


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 ヒサカキは照葉樹林帯の二次林から極相林まで広く生育する低木から亜高木で、生育範囲がたいへん広い。照葉樹林域ならば、どこにでも、どんな森林にも生育しているという感じである。このような様々な生育環境に対応できる能力の秘密に関して、興味がもたれる。
 乾燥にも強く、尾根筋などでは低木状態で強い日照のもとに生育し、樹林の中では同じ種とは思えないほど大きくなる。乾燥に強い秘密の一つは、気孔の形によるらしい。アカマツと同様に、葉の裏面から陥没した位置に気孔がある「陥没気孔」を備えている。雄株と雌株があるが、山火事や伐採などによって性転換することも知られている。
 春にいち早く花を開き、独特のにおいで春の訪れを感じさせてくれる。果実はゆっくりと大きくなり、冬に熟す。ほぼ、一年間果実を付けていることになる。早春の花の少ない頃に花を開いて虫によって効率的な花粉媒介を行い、冬の果実の少ない頃に鳥により散布されるわけである。