ミツマタ Edgeworthia chrysantha (ジンチョウゲ科 ミツマタ属)
 ミツマタは中国南部原産の落葉低木であり、古くから日本に導入され、江戸時代から製紙に使われるようになった。各地で栽培されており、時に野化している。岡山県の県北はミツマタの大産地の1つであり、山の斜面などを利用して栽培されている。大蔵省印刷局への局納ミツマタとして有名であり、ミツマタの購入、保管のために県北には各地に印刷局の出張所があった。現在でもかなりのミツマタが栽培されているが、しだいに植林地に改変され、昔よりも少なくなったように思う。お札の使用量が減ったとは思えないので、最近はミツマタだけではなく、様々なパルプを調合してお札の紙ができているのかと思う。ミツマタの栽培は、古生層などの堆積岩地域で盛んであるが、その他の地質でもやや肥沃な土壌の場所が好まれるようである。
 ジンチョウゲ科の植物は皮中の繊維が強靱である。剪定ばさみを使わずに折り取ることは困難であり、中の幹は折れても皮はズルリと付いてくる。この強靱な繊維は形成層の外側にある師管の周囲などにある師部繊維であり、樹木の最も外側に位置して、幹の強度を大きなものにしている。同じ科の植物にガンピがあり、こちらも優秀な和紙原料である。
 ミツマタという和名の由来は、枝が3つ又に分かれるからである。落葉であり、ジンチョウゲの仲間とは思いにくいが、ジンチョウゲもミツマタも枝が三叉になり、花の形もよく似ている。ミツマタは、世界的には花を楽しむために栽培されているという。
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