アセビ Pieris japonica (Thunb.) D. Don (ツツジ科 アセビ属)
アセビはシカなどの大型草食獣が食べないので、大型草食獣の多い場所ではアセビが選択的に残ることになる。逆に、都会の周辺や分断されて孤立した、草食獣の生息できない森林では有毒物質を含むことによる利益はない事になる。下の画像は岡山県哲西町の鯉ヶ窪湿原周辺の森林である。遠望するとコナラやアカマツの生育する普通の森林であるが、林内に入ると低木層にアセビが優占しており、林床にはほとんど植物が生育していない。常緑樹であるアセビが密生したためである。
鯉ヶ窪でアセビがこのように優勢であるのは、この地域で放牧がなされた事があるためである。牛がアセビを食べ残し、その後の放牧中止によって森林が回復したものの、低木層では当時生育していたアセビが繁茂したわけである。現在は大きく生長しているアセビであるが、草食獣の居ない世界では未来はない。