ギョリュウモドキ(カルーナ) Calluna vulgaris  (ツツジ科 カルーナ属
 スイスでの移動中、海抜1000mを越える頃から岩上などに薄紫の花が咲いているクッションが見えていた。エリカなどのツツジ科植物であろうと見当をつけていたが、カルーナであった。海抜が高くなるほど生育量が多くなり、2600m程度まで分布するという。基本的には、森林限界よりも上部の草原であり、尾根のような表土が形成されにくく、他の草本が育ちにくいような場所に群落を形成している。文献などには「酸性土壌を好み」といった文章があるが、石灰岩地帯では生育しにくいということであろう。羊や牛などの大型哺乳類の摂食にも強い抵抗性があるそうで、火入れにも耐えて再生するとのこと。広くカルーナが群生している状況は、放牧や火入れなどの活動が長期間続いたためであろうと思われる。カルーナが生育する草原をヒース(Heather) というが、ヒースは過放牧が原因であると聞いたことがある。草食獣が食べ過ぎると、このような植物が生き残って群落を形成することになるのであろう。
 カルーナは1属1種であり、葉が十字対生すること、萼が花冠よりも長いことにより近縁のエリカ属とは区分される。ヨーロッパに広く分布し、様々な園芸品種が作られており、日本でも寒冷地では栽培されていることからギョリュウモドキという和名があるが、カルーナの方が一般的な呼称ではないかと思う。花は晩夏に咲き、花の色は薄紫から藤色。花冠は4裂して長さ3mm、萼も4裂して長さ6mm。
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