ハマボッス Lysimachia mauritiana Lam. (サクラソウ科 オカトラノオ属
 私のファイルとしては、ハマボッスの画像は海岸植物の中では最も多いのではないかと思う。比較的出会うことが多いことと、絵になる姿であるからであろう。九州の日向馬ヶ背には見事な群落があった。岡山県の海岸でも生育を見ることができる。岩石海岸の岩の割れ目が好きなようで、堆積岩の層理が立っている場所は最高の生育地なのであろう。地下水が供給される岩の割れ目は結構塩分の影響を軽減できるのかもしれない。

ためしに学名で検索してみると、まずハワイの自生植物の解説が引っかかってくる。ハワイ語ではKolokolo kahakai。ハワイの岩石海岸には行っていないので、またの機会に、であるが、ハワイ語のコロコロ・カハカイは気になる。コロコロは板の上をコロコロころがるという意味だそうで、カハカイは砂浜。海岸の丸くてコロコロ転がる草というニュアンスであろうか。次に中国のサイトが来る。中国名は?海珍珠菜。海岸の珠草といった意味であろうから、基本的に玉であって、果実の形態を意味している。さて、英語ではOcean primrose 海洋桜草。

平凡社の図鑑は「浜払子の意味であろう」としており、牧野植物図鑑からの伝統ある説を継承している。清末・清末(2014)は、「浜坊主」を提唱している。小生もこれに大賛成で、前述のように、ハワイ語の「コロコロ砂浜草」、中国名の「海岸の珠玉草」も同様に、丸い果実に着目しているからでもある。

文章を書きかけてふと気になってもう一度図鑑を見ると、越年草と記載があり、なるほどそうか!となぞが解けた。オカトラノオと同じ属で、多年草であるとばかり思い込んでいたのだが、越年草であった。従って、丸い果実をつけた個体は枯れるわけですね。その姿は球珊瑚がたくさん付いているような姿であり、とてもハエを追う毛はたきとは思えません。

しかし、大きな株を作って開花している様子を見ると、多年草と思えてしまうわけですが、条件のよいところでは根元から多数の花茎を出して大きな株を作る場合もあるということだと思います。こんなわけで、毎年種子散布してからの定着であったとは思っていませんでした。海岸への定着はなかなか大変な作業のはずです。
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