キリ Paulownia tomentosa Steudel (ゴマノハグサ科 キリ属
 キリの花は5月に咲き、その後果実は大きく生長して垂れ下がる。果実は初冬になってはじめて裂開し、中から大量の種子を風に乗せて散布する。果実は3cmほどの卵型で、先端は尖っている。内部は2室にわかれており、2つに裂開する。2つに割れた果皮は完全には開かず、半開状態のまま春を迎える。種子にはフリルのような膜質の翼があり、よく風に乗りそうである。強風が吹くときに開いた口から風が吹き込み、中の種子を少しずつ舞い上げて散布しているようである。なかなかの工夫と見受けた次第。
 春になっても、量的には少ないものの種子は果実の中にしつこくこびりついて残っている。春が訪れる頃、山林火災が頻発するようになるが、火災の跡ではキリが侵入して、谷筋などの水分条件の良い場所でいち早く生長する。こんな姿を見ていると、春になるまで一部の種を残しておく戦略の意味がわかるように思える。


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