ハイマツ Pinus pumila (マツ科 マツ属)
ハイマツは日本の亜高山帯から高山帯にかけて生育する低木である。典型的な場所では、1枚目の画像のように広大な群落を形成する。尾根や湿原の周辺など、高木の生育しにくい場所では生育高度は低下する。
乗鞍岳でハイマツ群落を見ていると、観光バスから降りてきたおばさん連中が、美しい風景に声を上げていた。その中の発言「このマツ、手入れするのは大変でしょうね」・・・庭木のマツを手入れするのは大変な作業であり、庭師さんにお願いすると、結構な金額となる。丁寧に刈り込まれたかのように見えるハイマツ群落を見て、庭のクロマツを思い出したのであろう。3000mの山頂まで観光バスがあがってくる乗鞍岳ならではの事ではあろうが、平地から何の苦労もなく登ってくるハイヒール族には海抜3000mの厳しい環境などがわかるはずもない。ハイマツを刈りそろえるのは、庭師さんではなく、自然の厳しさである。積雪が深い場所ではハイマツの樹高はそれに対応して高くなり、2mを越えることもある。逆に、雪が吹き飛ばされてあまり積もらない場所では樹高は低くなる。冬季に雪面から出てしまうと、削り取られてしまうからである。
ハイマツは名前の通り、地面を這う樹形となっている。厚く積もった雪の下で厳しい冬をやり過ごすのである。幹が地面に接するとその部分から発根する。長い年月では、風下側あるいは低い方へ匍匐前進していることになる。