ハイマツ  Pinus pumila (Pallas) Regel  (マツ科 マツ属)
 ハイマツは亜高山〜高山帯で群落を形成する樹木であるが、異なった側面として火山性ガスの噴気孔の周辺において優占することがある。活火山などで有毒な硫気が噴出している周辺には、特異な植生が発達することが知られている。火山ガスに植物体が直接さらされ、さらに土壌が強烈に溶脱されるため、その環境に耐性のある植物しか生育できないのである。
 そのため硫気孔原では、低海抜地にかかわらずハイマツが生育する現象がみられることがある。ハイマツは硫気に耐性が強いようで、イソツツジと共に最前列に生育している(写真上)。生育する植物の種類は少なく、砂礫がむき出しで枯死したハイマツの幹が散在し、特異な景観を作り出している(写真下)。このような景観は地獄と呼ばれることもある。
 硫気孔原の植生は、硫気孔から離れるにつれて次第に火山ガスの影響が弱くなり、ハイマツの群落の中にシラカバなどが侵入するようになる。さらに距離が離れるとミズナラやトドマツも混生するようになり、やがて周囲の森林へと移行する。
文章・画像:太田 謙
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