ハイマツ  Pinus pumila (Pallas) Regel  (マツ科 マツ属)
 冬山の経験がない限り、冬季にハイマツの姿を見ることは少ないだろう。
 信州白馬八方尾根スキー場の最上部にある八方池山荘付近は、なだらかで幅の広い尾根であり、北信州を見渡すことのできる絶好の写真撮影のポイントである。良い天気に恵まれれば、神々しく雪を抱く白馬の山々を目の当たりにできる。
 さて、この場所を夏季に訪れてみると、そこはハイマツやクロベ・コメツガ・ミヤマナラなどからなる低木林であった(写真右上)。樹高は1〜3mあり、細かな地形の起伏もあるので、同じ場所であるとすぐに理解しにくい。冬季には随分と雪に埋もれているのである。一方で尾根の直下の斜面はほとんど樹木のない草原となっている。雪崩と土壌の移動の影響により、樹木の生育は困難なのであろう。積雪がいかに植物にとって劇的に環境を変えるかの好例の1つである。
 冬季のハイマツは、枝先がわずかに出ている程度で、ほとんどすべてが雪に埋もれている(写真左上)。他の樹木が雪から飛び出しているのと比べると、積雪に見事に対応した樹形を発達させている(写真下)。
文章・画像:太田 謙
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