2017年の談話室

種名一覧科名一覧雑学事典目次Top
過去の掲載目次

12/07 師走になりました
 カウンター数:1,538,812
バタバタしている間に、もう師走になってしまった。
今年からクオーター制が本格的実施となったので、講義がある期間は結構忙しい。
1学年を2学期に分けるセメスター制から
1学年を4期に分けるクオーター制に移行したということなのだが
1つの講義は週に2回講義することになる。
3日後には次の講義があるので、来週までに、ゆっくりと次回の講義の準備をしようというわけにはいかないのである。
課題のレポ−トやコミュニケーションレポートを整理する時間が無いままに
次の講義がやってくる。パワーポイントを作る時間が無い状態が続く。

しかし、講義がない期間があり、今年は11月の第二週以降は来年度まで講義が無い。
教員にとっては、教育にあたる期間と研究に携わる期間を分けてメリハリを付けようということであり
長期研修などに出やすいシステムである。
学生にとっては1週間の講義の種類数が半分になり、忘れる前に集中的に勉学ができるハズ。

ということで、この師走は研究三昧の生活ということなのだが
積み残した仕事の山と格闘中である。

昨年から今年にかけて、台風に追っかけられたような印象がある。
昨年の9月の屋久島では、台風12号がすぐ近くを通り、1日暴風雨。
今年の9月17日には愛媛大学で日本地質学会が開催され、ここで講演の予定であった。
前日から松山入りしていたのだが、台風がドンピシャ!
暴風警報が発令され、会場である愛媛大学の基準により学会は中止。
交通止めになる前に、早々にしまなみ海道を渡って帰着した。

10月の21日からは沖縄で植生学会。
台風21号が沖縄をかすめる予想の中
途中から引返すかもしれないという条件付きで岡山空港から那覇にむけて飛び立った。
ゆれますよ・・・というアナウンスの中、機内は意外と平静、無事那覇空港に着陸した。
空港の建物から出てみてビックリ、かなりの強風で、着陸する飛行機はこれで最後か?
と思っていたのだがさにあらず、続々と飛行機は着陸し
学会に向けてたくさんの学会員が集結したのである。

しかしながら、LCCはのきなみ欠航したそうで
知識人の話によれば、ANAやJALなどの大きな機体は風の影響を受けにくいが
機体が小さいLCCは風に弱いので簡単に欠航してしまうとのこと。
来るはずのO嬢の飛行機は前日に欠航の宣告があったそうだ。

この風の中、学会は開催されるのか?
歩くことが困難なほどの強風の中、何の問題も無く、学会は予定とうり開催された。
樹木は風にたなびきながら、特に頑張ることなく耐えているように見えた。


〔台風の強風で風にたなびくミフクラギ 学会会場の前にて〕

さて、植物生態学の出発点は湿原なので北海道によく行っているか
というとそうではなく、回数から言えば屋久島以南の琉球列島への旅が多い。
色々な島に合計10回ほどになる。
この間、たくさんの画像があるのだが
○○属とか□□の仲間などのように最終的に同定できない画像が山とある。

スライド時代のものの中には場所も年月日もわからないものが結構あって悩ませる。
スライドを番号順に並べてスキャニングしてデジタル化し
拡大してみると看板が写っていたりして地名がわかることがある。
この時点から謎解きが始まる。
googleのストリートビューが強力なツールとなる。
場所を限定して店名を検索すると、その店がいまだ存在し、場所が確定できたりする。

沖縄シリーズのスライドファイルに詳細が書いてないシリーズがあった。
写っている様子から、石垣島なのではないか?と予想した。
中に、特徴的な山が写っていた。どこ?
ストリートビューで島を一周すると、「ここだ!」という場所があった。



1枚目は1987年4月の石垣伊原間の牧場の画像であった。
牛が放牧されている画像もあり、牛が等高線状に歩きながら草を食べるので
山に横縞ができるのは九州の霧島などの放牧地でもよくある現象。
そのことを解説するために撮影したものであるが、講義でこの画像を使えたことは無い。



2枚目は、ほぼ同じ場所からのgoogle ストリートビューの画像。
航空写真の撮影年代は2017年、すなわち今年。
ちょうど30年の年月をおいての姿であるが、放牧は中止され
大規模な畜舎飼いになっている。
この木が、30年でここまで大きくなった と判読できそうである。

こんなことが判り始めると、30年前の記憶が甦ってくる。
それまで「どこかのマングローブの画像だな・・・・」と見ていた画像が
駐車場の位置と、そこから撮影した画像などの記憶が甦ってくる。
画像のすばらしさである。
前に走るばかりではなく、後ろを振り返るのも大切ですね・・・・・・

なお、これほど沖縄の画像を発掘しているのは
わかる図鑑「琉球列島の樹木」によって過去の画像が同定できるようになったためである。

5/03 鯉ヶ窪 湿原まつり
 カウンター数:1,521,365
連休の前半、岡山県新見市の国指定天然記念物である鯉ヶ窪湿原がある
新見市哲西町で『湿原まつり』が行われていることは以前から知っていた。
日本に湿原は数あれど、湿原まつりがあるところはそんなに無かろう。
今年は第28回の開催となる。

この祭りでは、『はやし田植え(太鼓田植え)』が古式豊かに行われており
これは岡山県重要無形民俗文化財に認定されている。
牛馬を使って農耕を行っていた時代、牛の労をねぎらったり
疲れないように調子を合わせて田植えを行っていた様を今に引き継いでいるという。
市内の女子大学生も手伝ってくれているということで華やいだ田植えでした。
岡山県県北の春が遅い地域では、今が田植えの真っ盛り。

着飾った和牛のデモンストレーション

早乙女と太鼓による田植え

鯉ヶ窪湿原では、この季節にリュウキンカが満開となる。
環境省の実施しているモニタリング1000の調査サイトの1つとしてこの鯉ヶ窪湿原が指名され
昨年の10月に調査を実施した。
この調査は三年間隔で100年継続する予定となっている。
昨年がその初回であり、気の長い調査が始まった。

以前に調査したことがあるラインを再調査したわけなのだが
前回は確認できていたリュウキンカが、昨年は確認できなかった。
そのため、心配になって今年の様子を見に行ったという動機が大きい。

心配ではあったのだが、ほぼ平年と変わらない繁茂・開花状況で一安心。
満開には少し早く、七分咲きといった状況ではなかろうかと思った。
100年間の長期モニタリングを行うわけだが
その年の気候の状況により、すでに葉を落としていたり
まだ芽を出していなかったりなどの変化があり
経年的な変化と年的な変化を見誤らないようにしなければならないことを、改めて確認したしだい。

鯉ヶ窪湿原のリュウキンカ(2017/05/03)

鯉ヶ窪湿原のリュウキンカ(2017/05/03)

とにもかくにも、大きな変化はなさそうで一安心。
じっくり眺めるとサワオグルマの葉が伸びつつあるのが確認できるが、まだ花茎は伸びていない。
花はリュウキンカと同じ金色であるので、リュウキンカと競合するのを避けているのかもしれないと思う。

リュウキンカの季節が終わるとサワオグルマレンゲツツジの花咲く時期となる。



3/01 ブロッコリーとヒヨドリ
 カウンター数:1,516,045



昨年、ブロッコリーの苗を2本いただいたのでトマトの横に植えておいたところ
立派に育って何度も食卓をにぎわせてくれた。
1番目の花序を収穫すると、脇からどんどん枝が出て新しいツボミが出てくる。
ところが画像を見ていただくとわかるように、葉がほとんどなくなってしまった。
ヒヨドリなどが食べてしまうのである。
葉は柔らかいところが食べられて主脈だけになってしまっているのだが、どんどん新しい花序が形成されてくる。
緑の花序そのものが、結構光合成に貢献しているのではないかと思う。



昨年の実績に基づき、今年は本気でブロッコリーを栽培することにした。
少々出遅れてしまったので、まだ食卓に上っていない。
昨年ヒヨドリに食べられてしまったので、今年はテグスを張って自由な摂食を妨害してみた。
少しは食べてもいいが、丸裸にしないで欲しいといったニュアンスであった。
当初はオドシの効果があったが、数日でその効果は薄れてきた。
地面を歩いて近寄ってきて、食べている。
ヒヨドリは学習能力が高い。



テグスでは効果がなくなったので、防虫ネットを買ってきて全体を覆うことにした。
1枚かけるとビックリして近寄らなくなるかと思えばさにあらず。
隙間からくぐって入ってくる。
こうなると腹が立って、あと2枚買ってきて完全に覆うことにした。
少しでも隙間があると入るので、ピンと石で隙間無くとめることになる。
結構お金がかかることになってしまい、ブロッコリーを買ったほうが経済的かもしれないと思い始めた。



今年はブロッコリーとエンドウが菜園の主役である。
ブロッコリーを覆うと、今度はエンドウが食べられ始めた。
もともとキュウリネットに絡ませるようにしているので、鳥は近寄りにくいだろうと思うとさにあらず。
茎の先端や新しい葉など、柔らかいところを全部食べられてしまった。



結果的に、エンドウも覆わなくてはならなくなってしまった。
近所の農地ではこのようなことはやっていないので
我が家の菜園では、ヒヨドリが意地悪をやっているのではないか、と邪推してしまう。

ところで、菜園を全て覆ってしまった直後
我が家の駐車スペースにヒヨドリが一羽死んでいたそうだ。
車庫の傍に植えているツバキ:侘助(ワビスケ)からの吸蜜中に
何らかのトラブルが起きたのではないかと思っている。
菜園を襲撃していたのはいつも二羽であり、夫婦なのかもしれないと見ていたが
そのうち一羽が死んでしまい、なんだか悪いことをしたように思えてちょっとかわいそうでした。



さて、我が家の庭にはヒヨドリがよくやってくる。
ナンテンの実を食べにきたり、サザンカやツバキの蜜を吸いに来る。
大半は大目に見ているが
一昨年に我が家にやってきた太郎冠者という品種のツバキは、ヒヨドリの被害にあっている。
この太郎冠者は枝が細く、葉も細くて花もスリムでやさしい感じがする。
この花がヒヨドリの被害を受けるのである。
枝の細さがヒヨドリの体重を支えにくいので、花にしがみついて逆さになって蜜を吸う。
その結果、花が咲く傍から痛んでしまう。
ツバキの花は寿命が来るとポタリとまとまった状態のまま落ちてしまう。
しかし、ヒヨドリが傷つけた花は、咲いたばかりなので当分は落ちることは無い。
ヒヨドリにとっては花より団子なのではあるが
少し遠慮してくれないかな・・・・・



ヒヨドリの嘴は細くて長い。
この形はメジロに似ており、吸蜜することに適している。
早春に咲く花の受粉には大きく貢献しているに違いない。
もうすぐサクラの咲く季節になるが、その頃になるとツバキの花を傷めることも少なくなってくる。
春よ来い。


1/04 あけましておめでとうございます。
 カウンター数:1,512,653

昨年はイギリスのEU脱退やアメリカの大統領選挙の結果など
予想と違った結果の続出で、マスコミから流れてくる情報との
違いに戸惑った一年であったように思います。

自然災害は、予期できぬことであるわけなので熊本地震とか鳥取地震に関しては
起こることに関して予想と違うわけではありません。
単なる希望的観測とは異なっているわけで、これは自然が自然であるということなのでしょう。

希望的期待が実現できたことといえば、広島カープの24年ぶりのリーグ優勝でした。
日本シリーズは残念な結果に終わりましたが
広島大学の同級生は、リーグ優勝を祝うために久々に集まりました。
広島に所縁をもった人間の熱い集まりでした。

さて、昨年の3月には無事4年2期=8年の学長任期を満了し
特担教授として教育と研究の現場に戻ることができました。
学長任期中におきましては皆様のご厚情をいただき、まことにありがとうございました。
おかげさまで回復基調のなかの舵取りで、建設的な気持ちの中で過ごさせていただきました。

教育産業は構造的不況業種の一つではありますが
良いところは伸びるとの信念で大学の改革に取り組んできたわけですが
皆様のご協力を得ることができ、やれることはできたのかな、との感もあります。

わたくし個人としては、研究に関する貢献が中途半端であったことを誠に申し訳なく思います。
役職について大学運営に携わってきた年月は15年にも及び
自らの研究に従事する時間と知恵が十分でなかったことに関する悔いがあります。
後戻りできるわけではありませんが、未来に向けて今一歩前進しなければとの思いが沸き上がります。

現在やらなくてはならないと思う仕事の一つは、後世に残しておくべき財産のデジタルアーカイブです。
大学生時代からのスライドフィルムは色あせつつありますが
木曽御嶽山の画像は噴火前の記録として貴重なものであると思いますし
霧ヶ峰湿原や日光戦場ヶ原湿原の調査の際の画像は残しておかなくてはなりません。


<<36年前の霧ヶ峰八島ヶ原湿原のスライドからアーカイブした画像>>

もちろん幾つあるかもわからない植生調査資料は
植生遷移を記録するデーターとして貴重であると思います。
結構これらをアーカイブするには大変の手間と労力が必要です。

アーカイブするだけで頑張ればよいのですが、昔の植生データーを眺めていると
現在の植生との違いが気になり
30年間の植生の変遷などと題して研究をしたくなるではありませんか。困ったものです。

学長職を終えて、いざ研究に邁進!としたかったわけですが
4月になってからは学長室からの撤退と研究室の移転で減量と片づけに終われ
さらには前述のデジタルアーカイブに追われ、前進的な研究は行うことができない八か月でした。
今まで、前進的な姿勢ばかりで今までやってきたことの整理・整頓を全く行わず
走ってきたわたくしの姿勢が問われているわけです。
今後の人生は、置き去りにしてきたことを片づけることと
やり残してきたことを少しで片づけることにあるわけで、基本的には片づけということでありますね。

ということで、フルスピードで前進というわけにはいかない八か月でした。
そのような中でやってきた仕事としては、赤磐市の野生生物調査とイチョウの巨樹調査に関する調査
モニタリング1000の一環である鯉ヶ窪湿原の調査などは重要な仕事でした。


<<岡山県奈義町菩提寺の国指定天然記念物のイチョウ 多くの気根が伸びて地につき、巨大な幹を形成している>>

今年もやりたいことが目白押し、調査のために自転車買いました。
久々にたくさん植物を採取し、標本を作っています。
実物をじっくり見ることが大変重要であることを再確認いたしました。
今年は、コケとシダを頑張りたいと思います。

皆様のご発展をお祈りいたします。

種名一覧科名一覧雑学事典目次Top
過去の掲載目次