リュウキンカ Caltha palustris var. nipponica  (キンポウゲ科 リュウキンカ属
 岡山県では新見市哲西町矢田鯉ヶ窪湿原のリュウキンカが有名。この湿原ではリュウキンカの開花が見頃の5月はじめに「湿原祭り」が開催され、多くの来訪者がある。群生しているのはハンノキ林の林床である。リュウキンカはハンノキの葉が展開する前から咲き始め、黄金のカーペットとなって見事。夏になるとその後に生育してきたビッチュウフウロなどによって覆われて見えにくくなってしまう。結果として、時間的なすみわけになっている。

 このリュウキンカの群落が、イノシシの群れによって徹底的に撹乱されてしまった(イノシシによる被害復旧 (2003年2月15日))。リュウキンカは有毒であると思っていたので、リュウキンカ以外の植物が食べられ、リュウキンカが選択的に残されると考えていたのだが、予想に反してその後のリュウキンカの再生は思わしくなかった。そのような疑問を抱いていた中、青森県の吉田さんからメールをいただいた。

     『ご指摘のようにキンポウゲ科に毒草は多い、というよりほとんど毒草ばかりなのですが、このエゾノリュウキンカとバイカモは無毒で一部の人々に山菜として利用されています。 さすがにバイカモは生育地が限られるので、最近では採取する人も少なくなったようですが、エゾノリュウキンカはまだ採取、利用している話を聞くことがあります。 人に無毒ならおそらくイノシシにも無毒で餌として利用可能なのではないかと考えた次第です。』

 眼から鱗であった。イノシシは食物の少ない冬季、リュウキンカの群生地に狙いをつけて侵入したのであろう。確かにバイカモは白和えで食べたことがあった。キンポウゲ科は全て毒草という思い込みを改めなくてはならない。以後、湿原の周辺に電気柵を設置して対応することとなった。
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