アベマキ Quercus variabilis Blume  (ブナ科 コナラ属
垂れ下がったアベマキの雄花序1つの花序には40から70程の雄花が付く
葉腋の雌花1年目の小さなドングリ・・・ほとんど大きくなっていない
 アベマキは4月のはじめ頃、新葉の展開とともに花を咲かせる。雄花序は前年に伸びた枝の芽から垂れ下がり、長さ10cmほどになる。まだ十分に展開していない葉の間からたくさんの雄花序が垂れ下がるので、木全体が房に覆われたように見える。1つの花序には40〜70個の雄花が付く。木全体ではものすごい量の雄花が付き、大量の花粉を生産するはずであるが、開いた花序をふるってみても花粉が飛散するようには感じない。どの程度の花粉生産量なのであろうか。

2年目の春(4月)段階:1年間でほとんど大きくなっていない6月終わり頃:急速に大きくなっている
8月には、殻斗が開きはじめ、ドングリが見え始める10月には、一部が落下し始める
 雌花は新しく伸びた枝の先のほうに付き、葉腋に普通1つ、時に2つ付く。雌花は受精するとドングリを形成することになるが、1年間はほとんど大きくならず、かなり注意しないと見落としてしまうほどの大きさである。1年間なにしていたの? と言いたくなるほどの小ささである。種子は小さな植物体(胚)と蓄えた栄養分(胚乳)からなっているものが多い。ドングリの場合は、豆と同様に、幼い植物体の双葉の部分に栄養分が蓄えられている。1年かかってまずは胚を形成し、後は栄養分を蓄積するだけといった状態なのかもしれない。

 アベマキのドングリは、2年目には急激に大きくなり、9月の終わり頃には落ち始める。まだ十分に生長が可能な暖かい秋にドングリを散布し、すぐに地中深くまで十分に根を伸ばして春を迎える戦略である。春に十分に根を発達させた状態で発芽するためには、まだ暖かい秋にドングリを散布する必要がある。その時期に大きなドングリを散布するためには4月からの半年では短すぎるので、わざとスローペースでドングリを生長させるのかもしれない。
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