ヤマモモは本州の関東・福井県よりも南西部・四国・九州・琉球の暖地・沿岸域に生育する常緑の高木。台湾から中国・フィリピンにも分布する。樹高は10mほど。樹形は落ち着いており、庭木や公園木などとしてもよく植栽されている。 雌雄異株であり、果実は黒赤色に熟し(夏)、独特の松ヤニ様の味があっておいしい。果実は日持ちがしないので、広い地域に流通・販売されることはなく、地元消費型である。街路樹として植栽されたものにたくさんの果実がなっている事があるが、食べられずに落ちてしまっていることも多い。もったいないことである。近隣に雄株がないと結実しにくいようで、販売されている苗には雄株に雌株を接ぎ木したものもある。 ヤマモモはハンノキ属植物と同様に放線菌と共生しており、空中窒素の固定能力がある。このような能力に注目され、山林火災跡地などの治山植栽に用いられる。全般的には痩せ地にも耐えるとされているが、オオバヤシャブシ等に比べて生育に水分を必要とする。花崗岩地域などの透水性の高い土壌地では、尾根筋などの乾燥しやすい場所での植栽は成功しにくいようである。一方、谷筋や湿地の周辺では旺盛に生育しているものもあり、山の中における自由競争と保護された庭園木としての性質には違いがあるのであろう。 瀬戸内海の島ではウバメガシ林の発達するような立地のなかで、やや水分条件が良いような場所に見られることが多く、ウバメガシと混生していることもある。岡山県の六口島では、クロマツとともに治山植栽されたものが、マツ枯れによってヤマモモの優占群落に変化してしまった場所がある。 |