セツブンソウ Shibateranthis pinnatifida (キンポウゲ科 セツブンソウ属) |
セツブンソウは2月の終わり頃から開花しはじめる。3月の終わりには画像のように果実を形成しており、5月の中ごろに熟し、種子を蒔いた後で地上部は枯れてしまう。野外調査の最盛期には生育を確認できず、見逃されていることも多いように思う。 春分の頃、気温は低いものの既に太陽高度はずいぶんと高くなっており、冬の間に光が当たりにくかった場所にも木漏れ日が当たるようになる。本来ならば、冬の日溜まりの中に生育したいのかも知れないが、そのような場所には越年草や常緑の低木などが生育しており、競争に負けてしまうことになる。人間が管理を行っている場所では明るい開けた場所にも生育するが、それでも南斜面には生えにくいようである。 前ページでは、森定氏が「急傾斜地や崖錐の厚く堆積する不安定斜面が見られ、特に北向き斜面では草本層の植被率の低い場所が稀に存在する。このような場所が、自然状態での早春植物の生育地だったのであろう。こんな場所はかなり限定されていそうだ。」としている。この件について、別の観点から述べてみよう。もし、人間が砂防堰堤やダム・取水堰、道路などを川沿いに造らなかったらどうであろう。川は毎日一刻も休まずに土砂を下流に向かって搬出している。渓谷の浸食が続くと山の斜面が耐えきれなくなり、持続的、あるいは一気に崩落していたはずである。人間の活動が自然に大きな影響を与える以前の昔、斜面の崩壊は当たり前、自然は現在よりもはるかに動的であったはずである。 |
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