ソメイヨシノ Prunus ×yedoensis (バラ科 サクラ属
【根からの発条】
 ソメイヨシノは結実しないので種子では増えないが、根から新しい幹を形成して増えることがある。下の画像は地表に表れた根から新たな地上茎を発生させたものである。地表面が洗われて流れるような場所では、根が地表面に出てしまうことがある。この斜面で草刈りを行っていると、春には勢いの良いサクラの新幹が所々で出てくる。これを残してやると急激に大きくなって立派なソメイヨシノに生長していく。最初はカスミザクラなどの芽生えかと思っていたが、咲いた花を見ればソメイヨシノであった。せっかくだから移植してみようと少し土を取り除くと、地下には太い根があって、とても移植できたものではない。次々と根からあたらしい幹を出していく様子は、ソメイヨシノが増殖しているわけではあるが、より条件の良い場所へと移動しているように見える。種子を作れないソメイヨシノの隠し技である。

 ソメイヨシノの苗は種子で増やしたヤマザクラに接木して仕立てると聞いたことがある。確かに、接木は確実な増殖方法であろう。そのような方法によって苗がつくられているのであれば、このような根発芽してくる個体はヤマザクラであるはず、と期待していたが、幹はソメイヨシノであり、やがて咲いた花もソメイヨシノであった。根はヤマザクラではなくソメイヨシノであったことになる。
 ソメイヨシノだけではないが、接木によって作られた苗を深植えすると、地中にある接ぎ穂(ソメイヨシノ)の最も下の部分から根が出て、やがて完全に接ぎ穂(ソメイヨシノ)が独立してしまう。接ぎ穂の部分がある程度地中にあることが必要であり、高接ぎではこのような現象は起こらない。
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