ヤマツツジ Rhododendoron obtusm var. kaempferi  (Planchon) Wilson (ツツジ科 ツツジ属) 



 
 ヤマツツジは高さ1〜5mの半落葉低木で、若枝や葉柄には淡褐色の伏した扁平な剛毛が密生する。葉は互生し、春葉と夏葉の別がある。北海道南部・本州・四国・九州の低山地の疎林内に生える。

 私はこのツツジを沿岸部(玉野市の深山公園内や香川県の豊島等)でよく目にするので、この朱色の花を見つけると、「海に近づいてきたのかな?」と考えてしまう。沿岸地域に特異的に分布しているのであろうか?。(実際には、名前の通り山地にも生育しているのだが、この地域ではそのような分布頻度になっている。)
 花期は4〜5月で、岡山県南部ではコバノミツバツツジの開花後に開花が始まる。山にこの両種が分布していると、春先は紫色に、その後朱色に変化する景観を見ることができ、非常に美しい。


 葉の裏には脈上に毛があり、コバノミツバツツジのように網目状の模様がみられない

 ヤマツツジは地域間の変異が多く、次のような変異型が各地でみられるようである。
キリシマツツジ(サタツツジ)R. obtusm var. obtum (Planchon)Wilson
 半常緑性、花色の濃淡の変化が大きい、霧島山麓から大隅半島までの鹿児島県に分布
サイカイツツジ R. obtusm var. saikaiense Yamazaki
 キリシマツツジに似るが、春葉や花がやや大きい。長崎県の五島列島・鹿児島県の甑島に分布
ミカワツツジ R. obtum var. mikawanum (Makino)Yamazaki
 キリシマツツジに似るが、葉・花共により小さく、また花は主に紅紫色である。愛知県豊橋市付近の林縁に生える。
ヒメヤマツツジ R. obtusm var. tubiflorum (Komatsu)Yamazaki
 夏葉が細長く花は紅紫色、花期には春葉が伸びない。広島県・山口県に分布
オオシマツツジ R. obtusm var. macrogemma (Nakai)Kitamura
 春葉が大きくてやや厚く、夏葉はやや硬質、花はやや肉質で普通紅紫色。伊豆七島・伊豆半島南部に分布

参考文献:日本の野生植物 木本U 平凡社

おまけ
岡山県南部地域においては、ヤマツツジ・コバノミツバツツジ・モチツツジの3種類
のツツジを見ることが出来る。このツツジ3種の区別点を挙げておく。
コバノミツバツツジ 葉が3枚輪生、裏にムベのような白い模様が見られる。
冬期には落葉する。
花は他の2種より早く咲き、紫色。開花後葉を茂らせる、つまり葉と花が同じ時期に見られない。
ヤマツツジ 葉は互生。春葉と夏葉があり、裏に光沢がある。
冬期には葉を残す(半落葉性)。
コバノミツバツツジの開花後に花をつけ、朱色。葉と花が同じ時期に見られる。主に沿岸地域に分布。
モチツツジ 葉は互生。春葉と夏葉があり、若い葉はべたつく。
冬期には葉を残す(半落葉性)。
コバノミツバツツジの開花後に花をつけ、明るい紅紫色(ピンク)。葉と花が同じ時期に見られる。

文:岡山理科大学大学院  中村康則 写真:波田善夫
1.ヤマツツジ 2. 3. 4.中村バージョン

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