コウボウシバ Carex pumila  (カヤツリグサ科 スゲ属
 異国情緒あふれる景観だが、1枚目の画像は千葉県銚子市の千葉科学大学キャンパスのすぐ前にある海岸。観察し始めて10年ほどになるが、年々砂浜が広がって、コウボウシバの群落が広がりつつある。緑色の濃い部分が安定した歴史のある群落であり、間が透けて見える前面の部分が比較的最近拡大した部分である。

 銚子の海岸は屏風ヶ浦で有名であるが、以前のレポートの5枚目、6枚目の画像を見ると、この砂浜には植物が生育していないことがわかる。銚子の砂浜は粒子が小さく、よく分級されている。つまり、大昔に利根川によって運ばれて堆積した砂が堆積したものが屏風ヶ浦なのであって、これが崩れたほぼ同じ粒径の砂ばかりなので、なかなか締め固まらず、流動性が高い。波が来るとすぐにサワサワと移動してしまう。そんな状態であったので植物の定着が遅れていたのであるが、隣接する屏風ヶ浦の崖が波浪によって崩れ、大量の砂が供給された結果、砂がたまって安定し、コウボウシバの大群落ができたというわけである。現在はコウボウシバの単一植生なのだが、やがて多様な海浜植生ができるといいな、と思っている。

 清末・清末(2014)はコウボウシバを「地下水指標植物」であるとしている。そのように指摘されてみると、納得できる点がいくつもある。おそらく、疎粒の砂浜では生育できないように思えるし、粒径が単一であれば、湿ったところにでてきるというイメージである。そのような場所では、真っ先に地下茎を伸ばして群落を形成できる先駆性を持っているに違いない。コウボウムギとよく似た戦略を持っているのだが、より小型で迅速に行動できるということであろう。
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