ホウキネズ (ヒノキ科 ネズミサシ属
 ネズは円錐形の樹形であるのが普通である。しかし、岡山県から兵庫県にかけての一部地域では、樹形が細長い円筒形のネズが生育している。新幹線の車窓などからも観察できる。このような円筒形の樹形になるのは枝が主幹に沿うように立ち上がるためであり、「ホウキネズ」と呼ばれている。
 東京大学の中井猛之進氏が山陽本線の車窓から細く立ち上がったネズに気づき、植物学教室の前川文夫氏に採集させた。その結果はネズの変種ホウキネズ Juniperus utilis var. obeliscea Nakai として朝鮮山林会報 (1938 ) No.163.p.24.に記載している。その後。学名の整理の中で特に注目されなかったのか、現時点では掲載されている図鑑は見当たらない。樹形はネズと中間的なものもあり、区別しにくい場合もあるが、備前市を中心とした地域に典型的なものが生育している。
 ホウキネズの枝は、幹から分かれた直後にほぼ垂直に立ち上がる。細い枝は横に開き、垂れ下がることもあるがやがて生長するにつれて直立するようである。このような樹形の針葉樹は地中海沿岸の針葉樹にも見られ、この地域の気候的特性と共通するようで興味深い。庭木などに乱獲されたこともあり、保護が望まれる。
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