イチョウ Ginkgo biloba L. (イチョウ科 イチョウ属)
ぎんなん
     秋にはイチョウの果実は落下する。果肉には糞臭に似た悪臭があり、かぶれる人もいる。踏みつけたままバスに乗ってしまうと顰蹙をかうこと請け合いである。ぎんなんを採るためにせっせと果実を集める人もあるが、概して都会ではこの悪臭によって嫌われている。特に食べ物屋さんにとっては願い下げたい街路樹であろう。
     イチョウは病害虫にかかりにくく、痩せ地でも良く耐えて成長し、剪定にも耐えるので街路樹に適した樹種である。雌雄異株であるので、雄株だけを植えることが出来れば、解決するわけであるが、種を蒔いたのでは雌雄がわかるまで十数年もかかってしまう。このような問題点を解決するために、最近街路樹として植栽されているイチョウは、すべて不明株に雄の木を接木したものである。
     イチョウの雌雄は、大きく成長したものでは樹形で容易に判別できる。雌株は果実の重みで枝が垂れ下がる傾向があり、横に枝を伸ばした樹形となりやすい。雄株はすらりと枝を上方に伸ばしており、花粉を風に乗せて遠方うに飛ばすには、この方が適している。
    イチョウの並木(岡山大学構内)
オハツキイチョウ(お葉付き銀杏)
     下の画像はイチョウの果実である。右端のものは普通に見られる果実であるが、それ以外の4つは葉の上縁などに果実がついており、オハツキイチョウ(var. epiphylla Makino)と呼ばれるものである。葉がついている果実は小さく、種子も小さい。花は葉が変化したものであるが、葉と花の関係を示唆するよい例の1つである。
    オハツキイチョウの果実
オハツキイチョウ(岡山県赤磐郡山陽町 地蔵院:2000/11)
イチョウの精虫
     イチョウは裸子植物であり、派手な花はつけない。春に開花するが、雌花は柄を含めて2〜3cm。花粉が風に乗って雌花につくと、花粉は発芽して発達し、やがて2個の精虫を形成する。受精は9月に行われる。受粉から半年もかかって受精するわけである。なお、精虫を形成する裸子植物は、他にソテツが知られている。
学名 Ginkgo biloba
     イチョウの学名は、なんとも発音しにくい。ギンッゴーとでも発音するのであろうか。本来は「銀杏(ぎんきょう)」をラテン語表記し、Ginkyo とすべきであったのだが、どこかで と間違ったらしい。たしかに、筆記体で書くと、は間違いやすい。いったんこのように決まってしまうと、訂正できない規約になっているので、実に発音しにくい学名のままとなっている。ちなみに、種小名の biloba は「二浅裂」を意味しており、扇形の葉が、中央で浅く2つに分かれる傾向があることを指している。
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