地球温暖化の懸念

2005年9月25日 中国新聞に掲載 


 最近、「観測史上最大の」、「記録的な」、などの言葉を聞くことが多くなった。地球温暖化による影響が現れ始めているのではないかと懸念される。

 温暖化が進行すれば、平均気温が上昇するだけではなく、気候の変動幅が大きくなると予測されている。旱ばつや集中豪雨、豪雪、異常高温や低温などである。超大型のハリケーン「カトリーナ」によるニューオーリンズの被害は想像を絶するものである。九月の始めに襲来した台風14号は、各地に記録的な被害と豪雨をもたらした。九州・四国・中国の観測地点の内、二割に近い60観測地点で観測史上最高値を記録したという。宮崎県南郷村では降り始めから1321ミリもの降雨があった。この数値は広島市の年平均降水量の1540ミリにほぼ匹敵し、一年間で降る量が一挙に降ったことになる。元々気候は変動するものであり、観測史上初とはいってもこの30年程の観測期間であって、百年に一度の異常気象が発生しても不思議ではないのではあるが。

 現在よりもはるかに二酸化炭素濃度が高い時代に進化した植物にとって、二酸化炭素の増加は光合成の能率が上がるので、かえって好都合である。気温の上昇は北方系の植物では問題になるが、気温が上昇することによって、乾燥しやすくなることのほうが、問題は大きいようである。

 昆虫などの変温動物では、成長速度は気温に大きく左右される。気温が上昇して成長速度が速くなると、害虫が大量発生する可能性も指摘されている。松枯れ病によるマツの集団枯損も、気温の上昇が原因生物の増殖率の増加と、活動の活発化を引き起こしていることが一つの要因ではないかと考えている。

 1万年ほど前の大昔、氷河期が終わって急速に温暖化が進行し、6000年ほど前には現在よりも暖かい時代があった。このように、気候は大きく変動し、生物はそれにともなって、南へ、あるいは北へと移動してきた。人類の仕業による地球温暖化が進行しているとすれば、今回の変動でも生物は生育適地へと移動できるであろうか。道路や耕作地、市街地などによって分断されてしまった自然を生物が移動するには、あまりにも障害が多すぎるように思える。不安ではあるが、過去の大きな気候変動を乗り越えてきた生物たちは、大きな犠牲を払いつつも、生き延びていくのではないかと思う。

 日本は二酸化炭素発生量の削減を求められている。これとはまったく無関係であるように、経済の発展と活性化が叫ばれている。経済の発展は、当面、二酸化炭素の発生量を増加させるであろう。気候の変化・変動幅の拡大によって人間社会の受ける影響は大きなものであり、社会資本の損失は甚大であろう。このままでは、破局に至る道筋を避けて通れないことになる。

 石油などの化石燃料の使用を削減し、循環可能な自然のエネルギーを使用するシステムに変える必要がある。地球温暖化によって被害を最も強く受けるのは、その原因を作り出した人間に他ならない。

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