クスノキ Cinnamomum camphora (L.) Sieb. (クスノキ科 ニッケイ属
 クスノキの幼木の葉は、成木とは異なり、三行脈が不明瞭であり、ダニ室がないものが多い。マツ枯れの跡地や公園の植え込みなどに芽生えてきて、同定に悩むことも多い。
 幼木の幹は暗紫赤色を帯びることが多く、日当たりの良い場所に生育する個体ほど、色が濃い。葉柄も赤紫色を帯びる。よく分枝し、葉腋から長い枝を出す。葉は成木に比べて細長く、葉柄への移行部も狭いくさび形となる。成木の葉が丸っこい感じであるのに比べ、縦に引き延ばした感じで細長く両端が尖ったものになる。ニッケイ属の葉脈は、中脈の根元付近から左右に分かれる支脈がよく発達する「三行脈」であるが、幼木では明瞭ではない。1本の個体の中でも、細長い葉ほど三行脈が不明瞭なようである。クスノキの同定に、三行脈の分岐点にできる「ダニ室」がある。成木では、時期はずれに出た葉にもダニ室があり、どうやって新しい葉が出るのを感知するのか不思議であるが、とにかく成木では必ずといって良いほど数個のダニ室がある。しかしながら幼木の葉にはダニ室がないものが多い。三行脈が発達していない葉では、ダニが侵入しにくいのであろうか? 残念ながら、クスノキの重要な同定ポイントである三行脈とダニ室がないので、クスノキの幼木の同定は困ることになってしまうのである。
 枝や葉柄が赤紫を帯びる点はクロガネモチの幼木と似ているが、クロガネモチの枝には陵が出ること、葉の上半分に鋸歯がでやすいことなどで、区別できる。
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