アカマツ Pinus densiflora  (マツ科 マツ属



【アカマツの芽生え】

 秋の晴天時にマツカサの鱗片が開き、種子が散布される。種子は光発芽の特性があり、光が当たる場所で発芽しやすい。生長にも強い光が必要であり、禿げ山のような林床にまで十分に日光が当たる場所で発芽・生長ができることになる。現在大きなマツが育っている場所も、そのマツが芽生えた時には禿げ山であったわけである。

 アカマツは先駆樹種(パイオニア)であると言われている。伐採跡や崩壊地、山林火災の跡地などにいち早く侵入し、地上部に投資して樹高をかせぐ。光が当たると発芽が促進されることは、裸地への侵入を目指していると考えられる。光合成の特性も典型的な陽樹であり、かなりの日照がなければ成長できず、すでに他の植物が生育している場所には侵入できない。
 病気にも比較的弱く、特に種子は菌類によって犯されやすい。散布された種子の98%が発芽前に菌類によって病死してしまったという報告もある。アカマツの種子が生存し、芽生えることができるためには病原となる菌類が存在しないか、マツタケ菌のような共生できるタイプの菌類の存在が必要なのではないかと思われる。実際、アカマツ林ではあっても遷移の進んだ林内ではほとんど芽生えを見ることはできないが、崩壊地や切り土法面などではたくさんの芽生えを見ることができる。このように見てくると、腐植土のたまっていない鉱物質の土壌であり、他の植物がほとんど生育していない場所、あるいはアカマツの疎林でのみ、芽生えて成長する事ができることになる。
切り土法面に発生したアカマツの芽生え切り土法面に発生したアカマツの芽生え
 法面では牧草の種子吹き付けが行われ、緑化されることが多い。このような緑化が行われるとアカマツが侵入することは少ない。上の画像のように法面が安定している場合には、積極的な緑化を行わない方がその場に適合した植生が成立し、より自然への回復速度は速いことになる。緑化が実施されてもその後の成長が良好でない場合にもアカマツなどの侵入が発生し、自然への遷移が始まる。このような事例を見ると、画一的な牧草種子吹き付け工の実施は考え物であり、花崗岩の切り土法面などでは吹き付けを行わないか、早期に衰退する植物による緑化が検討される必要があろう。

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