マツノマダラカミキリ Monochamus alternatus (コウチュウ目 カミキリムシ科)
台風で枝が折れたアカマツに見慣れぬカミキリムシがいた。季節はずれではあるが、マツノマダラカミキリであった。カミキリムシの仲間としては、あまりお目にかかることがない。夜行性であるという。通常は6月から7月にかけて羽化し、成虫となってからはマツ類の樹皮や葉を食べる(後食)。その際に昆虫の呼吸器官である気管の中などに乗り込んでいたマツノザイセンチュウ(松の材線虫)が傷跡からマツの組織内に侵入し、マツを枯損させる。マツノザイセンチュウはマツの中で急速に増殖し、夏にはマツが衰弱して葉が赤褐色となって枯損するが、その頃にマツノマダラカミキリは衰弱したマツを選んで産卵する。カミキリムシの幼虫は枯損したマツの材を食べて成長し、翌年に成虫となる。
カミキリムシの仲間は幼虫が材を食べて成長する。本来は衰弱した樹木などを適当に間引く役割を果たしていたはずであるが、アメリカ産のマツノザイセンチュウと連携することによって、強力な殺傷能力を持つことになってしまった。このような強い枯損能力は短期的にはカミキリムシの繁殖には大きく貢献したはずであるが、長期的に見ればマツの個体数が激減してしまい、生存の基盤を失う結果となっている。