クロマツ Pinus thunbergii (マツ科 マツ属)
【クロマツの古里】
海岸の岩場に生育するクロマツはマツ枯れによって大きな被害を受け、無惨な姿になってしまった。クロマツはアカマツに比べてマツ枯れ病に対して抵抗力が低いことも加わって、島嶼部のクロマツ林の多くは白骨林と化した。その後、一部ではクロマツの若齢林が回復しつつある場所があるものの、多くの地域は林床に生育していた海岸性の樹種によって緑は回復され、低木群落になっているところが多い。このように植生の変遷を見ると、自然性が高いと思われた海岸崖地のクロマツ林の多くは過去の森林伐採によって成立したものであることがわかる。
クロマツの古里は、海岸の岩場などに本拠を置きつつ、崩壊によって生じた裸地などを転々と移動しつつ・・・といった感じであろうか。海岸の砂浜はどうもクロマツ林としては植栽の結果であり、海水面の変動などを考えると、自然生であっても一時的なものかもしれない。