クロマツ Pinus thunbergii (マツ科 マツ属)
下の画像は畑が放棄される際に植栽され、その後山林火災にあったものの、生き残ったクロマツの年輪である。生育していた場所は花崗岩地域の島であり、尾根筋の畑を放棄する際、植栽された。植林直後から旺盛な成長を示しており、その後隣接する個体と林冠が接するようになって次第に肥大成長が鈍化している。植林されて18年後、当地で大規模な森林火災が発生したが、この個体は尾根状地形に生育しており、燃える植物が少なかったためか、かろうじて焼死を免れている。
森林火災は画像の下方向(斜面下部方向)からであったと推察され、風下側(斜面上部方向)は熱によって完全に死んでいる。クロマツの厚い樹皮は火災の熱に対して断熱材の役割を果たしており、樹皮の裂け目の部分では熱によって形成層が死んだものの、割れ目と割れ目の間ではかろうじて生き残り、その後に再生した様子が左右の部分である。
生き残った部分の年輪幅はそれ以前に比べて2年目から幅が広い。周辺の樹木が死亡し、火災によって栄養分が土壌に供給されたことも大きな要因であろう。
クロマツやアカマツは萌芽再生力がないので、山林火災には弱いが、厚い樹皮は山林火災から生き延びるためかもしれない。尾根筋などで生き残ったマツからは大量の種子が散布され、マツ林が再生される。厚く落ち葉が堆積した場所ではマツは生き残れない。山林火災によっても生き残ることができるような落ち葉の体積が少ない尾根の岩場がマツ類の生存拠点である。